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その他 忍法なしの幕末・明治以外を背景にした歴史小説や戦記、随筆、参考文献などなど


『いまわの際に言うべき一大事はなし。』☆☆角川春樹事務所99.12.8

98年秋出版のインタビュー集でございます。1996年年末から1998年春までの世相を背景に山風がトーク!という企画。枯れてます。わびさび入ってます。
かなりレイアウトいじってある体裁なのですが、わりと読みやすくてそれなり臨場感あるかんじ♪奥様も途中登板されまして、いいかんじ。


「忍法帖完結対談・山田風太郎×馳星周」☆講談社 IN☆POCKET99年10月号99.12.8

講談社文庫完結すなあああ、という同好の士のおたけびが聞こえてきそうですが、とりあえず対談でございます。入手困難の忍法帖短編、たくさんあるんだからどっか出してくれだよ・・(ブツブツ)
お写真拝見するに、アゴまわりの肉が結構おちてるかんじですが(汗)、これはこれで安定して低空飛行モードかという気も。

馳:いまの一番の楽しみといえば何ですか?
山田:何もしないことだね。

わははははははは♪
あー関係ないですがチェスタトンの「ブラウン神父」のどっかに、ブラウン神父ほどなにもしないことを愉しめるやつわいねえとかいう記述があったような。中学生よしのはこの境地を目指したいと念じたものですが、さすが天才老人山風はすでに行き着きまくってますのね・・


『風太郎の死ぬ話』☆☆角川春樹事務所・ランティエ叢書99.1.30

最近のエッセイ集です。98年夏に出版。
「快適なる孤独について」「食い意地について」「死に方について」「死に支度について」の5つに分けられてますです。
再録が半分以上あるかな〜という気もしますが(なんだかんだ言ってあんまりエッセイ書いてないのか?山風)、いつも通りの山風です。
巻末に略年譜ついているのですが、なぜか廣済堂の山田風太郎傑作大全への言及が抜けている・・・。


『柳生外伝・くノ一忍法帖』・・・☆のつけようなし(小沢仁志監督・東北新社) 98.7.9

『くノ一忍法帖』の名を冠しながら中身「柳生忍法帖」の謎映画です。予告ビラに堀一族の女に忍びの血がめざめるうううって書いてあるけどなんだああああ
というわけで、試写会見にいったのですが、なんでだか堀一族に忍びの血が流れているということになってて、んで危急の際にはなんか忍びの血が目覚めて怪しく忍法炸裂・・・(汗)。くノ一なんで、何人か死んじゃいますが、しかし山風ではないので全員死にません。(笑)
まあ二時間弱で沢庵の弟子僧とかこの予算で雪の会津ロケなんて無理なんで、その無理をなんとかうまいこと詰め込んだというあたりは、すごく頑張ってると言ってよいかも。監督の挨拶では、子供の頃はまった漫画とか、最近の香港映画とか、昔のマカロニウエスタンとか、いろいろ突っ込んでみたとのことでした。千絵の森山祐子という人は、斯界では有名な特撮戦うおねいさんらしいのですが、アクション・シーンかっこよかったです。ほかの山風忍法帖映画化するときは、是非またくノ一やってほしいっす。
山風には絶対書けない「忍法乳波動」(詳細はネタばれにつきナイショっ)、すごかったです(あらゆる意味において)。東京での公開は早くも済んじゃったようですが、見そびれた方はビデオ屋にて待て!


『江戸にいる私』(廣済堂文庫) 98.5.17

荒木又右衛門を仇と狙う娘&ちびちゃいのに鎖鎌の達人がなんだか翻弄される「山田真竜軒」(どーでもいいけど、鎖鎌使いって「えほっ」と奇声あげるのが作法なのか? たしか『くノ一忍法帖』の丸橋もそんな叫び声を・・)、秀吉中国攻めなお城攻防戦「悲恋華陣」(しかし山風が悲壮な武士道話書くと、なんかかえって異色なように感じられてしまうのわなぜ・・・)、『叛旗兵』「幻妖桐の葉おとし」とネタがかぶっているといえばもうおなじみの(ほんまか)秀吉の正妻北の政所を侍女の書簡で描く「黒百合抄」、パラレルワールドかもしんない明智が天下とった世界「明智太閤」、十六歳の由井正雪が某所でもつるんでた某妖人にとりつかれる「叛心十六歳」、怪作・中年のサラリーマンがひょんなことから(かなりおかしなひょんなことですが)から田沼時代にタイムスリップするてんやわんや「江戸にいる私」収録です。
というわけで、なんとも収拾つかない編集なのですが(あえていうなら山風隙間作品集・・・どこにも入れにくそうなんだもん)、ううううむ、それだけにちと個々の作品のレベルはとにかく短編集としてわ中途半端かもおおおお(滝汗


『山田風太郎はこう読め』☆(平岡正明・図書新聞) 98.4.19

平岡アカ正明による、山風評論です。盛り上がるトピックは『妖説太閤記』を使った権力論&明治物な近代国家論やら幕末股旅物系の時代背景とからめた解説でやんす。忍法帖そのものについてはそんなに正面切って扱ってないですが、なぜ朝鮮半島&明の忍法(幻法)は時間を遡行したり未来をみせたりするのかという問いは面白かったかもです。
ほげほげと忍法好きなよしのにはとりあえず読み物として面白く読めわしても、よしの的な山風の面白さにあんまし引っ掛かってこないかもー(汗)という茫漠たる感想しかでてきませんが、山風がちらほら(というにわたくさん)みせる日本批評的な部分に興趣を覚える方にはぐーかも。70年代のブームの中で山風がどう読まれていたかの一つの証左にもなってるかもです。


『戦中派天才老人 山田風太郎』関川夏央 ☆ (マガジンハウス) 98.3.26

インタビューというより、聞き書きという気もしないでもない参考文献です。大昔、関川夏央が漫画家谷口ジローと組んで日本近代文学な人々を描きたおした『坊ちゃんとその時代』シリーズにはまったものですが、今にして思えば、あれって山風明治物の方法論が骨組みになってたのね・・・。
ネタ的には他のエッセイ集や対談集と重複しているところも多いのですが、一年かけて行われた聞き書きだけあって、生山風(というか生山田誠也)の生っぽさがわりと感じられるところがあります。最後の回にわこんな対話が。

──人は死ぬとき、フィルムの逆回転のように自分の人生の再現イメージを見るといいますが
「(略)むしろ君とのこの支離滅裂な話がぼくにとってのそれかもしれない。」


『人間臨終図鑑』(徳間書店)98.3.14

作家やら歴史上の人物やら犯罪者やらの死に様です。死亡年齢別に分けて上(15〜64歳)下(64〜100歳)巻合わせて800人分は確実にあります。一気読みしたのですが、京極夏彦『絡新婦の理』をだいたい六時間で周回するよしのでも六時間近くかかりました(汗)。これが新書に収まるサイズだと永六輔ですが、この分量は確かに山風だ。
こーしてならべてみると、60代くらいまでは癌とかでじたばた苦しんで死ぬ羽目になりますが、80越すとだいたいまあなんとかあっさり肺炎という感じです。とはいえここに出ている死はその記録が公刊されているものに限られているわけで、死んだ後に娘が手記を残せるような人だと、ちゃんとケアしてもらってあんまし蓐瘡とかも出なかったのかも。しかし、自宅で死ぬか、延命やりまくらない医師の下で死なないと、生きながら地獄に堕ちれますね(TT)たぶん、年を取れば取るほど楽しめるご本かなあって感じです。


『室町少年倶楽部』☆(文芸春秋)98.3.8

「室町の大予言」と表題作収録。「大予言」は四代将軍義持の死に始まり、阿弥陀くじで決まった六代将軍義教(『柳生十兵衛死す』で暴れていたヤな小坊主・青蓮院)の死までを、謎の予言書「本能寺未来記」を小道具に描いた作。表題作は少年倶楽部な文体かもしれない小学校高学年から中学校向けな文体で八代将軍義政や後の妻日野富子・側室今参りの局・管領細川勝元の子供時代が描かれる前半から一転して、富子と今参りの局の闘争・勝元の策謀、そして非人間的な美を目指す義政と、どろどろ人間模様から応仁の乱勃発までが描かれます。ともに魔界としての室町時代な作。


『風来酔夢譚』☆☆(富士見書房)98.3.8

対談集です。なぜか風太郎邸でほとんど行われ、対談者は風太郎夫人手製の夕食をしこたま食いながら幸せそうにしゃべってます。メンツはらみょーにういういしい中島らも、北方謙三、中野翠、忍法帖の書き方を突っ込む菊池英行、戦中派ってことで尾崎秀樹、よくわからん西義之・楠本憲吉(ここで山風は女はイヌで男はネコだ説を開陳しています)、明治ネタてんこもり関川夏央、乱歩ネタ縄田一男、昔話に花も咲く吉行淳之介・小田島雄志です。
あんまし山風は自分の小説作法とか(風呂の一升瓶事件とかエピソードはしゃべっても)詳しく書かない人なので、菊池英行の突っ込みは貴重かも。明治物好きには関川要チェックです。


『戦中派虫けら日記 滅失への青春・昭和17年〜昭和19年(未知谷)98.3.8

副題のように『戦中派不戦日記』の前の部分です。時期的には実家の但馬から家出して沖電気で仕事しながら受験勉強〜東京医専一年生までです。浪人するわ金はないわ、下宿の三畳間はじめついてるわ友達いないわ叔父はいぢわるだわで『不戦日記』の七割り増し(当社比)は暗いです。本を買っては古本屋に持ち込んで金に換えているのですが、古本屋ともめて苦しんだりもしています。でも、たまに学習雑誌の懸賞に小説投稿して稼いでいます。国会図書館にもたぶん残ってないと思うけど(涙)


『御用侠』(講談社)98.2.24

江戸時代後期・文化爛熟政治腐りまくりの天保の頃、上州の牧童屁のカッパは父を殺した藩の馬術師範を殺して江戸に出奔してきます。最初はなんとなく侠客として名をあげたいと思っていた屁のカッパですが、ひょんなことから知りあった同心蓮樫瓢兵衛に十手を預けられ、目明しになります。しかーし賄賂を拒めば相手が死んでしまったり正義を保とうとすればするほど人間の不幸に寄与してしまう巡り合わせ。瓢兵衛に惚れているらしい目付の娘、旗江にほのかにあこがれたりしてますが、そうこうするうちに上州からくっついてきたお麦を上様に献上する枕絵のモデルにしたいと北斎&お数寄屋坊主河内山宗俊がやってきたのがきっかけで、お麦と、同じく目をつけられた旗江は父の賄賂ネタで責められとうとう人身御供にあげられたまま行方不明になるわ、気がついたら河内山に丸め込まれてるわてんやわんやの目に巻き込まれていきます。
司直の末端から正義VS悪の流転反転を描くという意味では『忍法黒白草子』『妖の忍法帖』などに近い感じですが、妙に他の作とくらべて暗い感じがするのは、屁のカッパが純朴な分早々に暗くなってしまったせいかも。お麦に対してつれなさすぎだし。


『半身棺桶』☆(徳間文庫)98.2.22

エッセイ集です。1991年の編集なんで、『人間臨終図鑑』関連のネタが目立ちます。他のエッセイ集に比べると、文学ネタが多めかも。同行者高木彬光のいびきに苦しみながらなんとなくついてってしまったバイロイトの話は、紀行エッセイってあんま読んでなかったのでちょっと新鮮でした。『風眼抄』読んで生家のご近所な人が教えてくれた風太郎父の死の真実とか(脳溢血でわなかったのです)、わりとしみじみモードの話も多いのですが、便秘にはセンナが効くとか相変わらずよーわからん話も入ってます。漱石・岡本綺堂『半七捕物帳』精読(そいや『警視庁草紙』の最初の方には半七がでてくるですね)・泉鏡花へのコメントもついてお買い得。


『室町お伽草紙』☆☆(新潮社文庫)98.2.22

室町物でございます。南蛮船長カルモナは落魄の足利家姫君香具耶を渡すものに南蛮銃三百丁を渡すと宣言。以前香具耶の身代わりにカルモナのえじきとなったイズナ使い関白九条稙通の娘・玉藻の憎悪がからみ、香具耶を守護する塚原卜伝&上泉主水+草履とりの日吉丸に、前々から落魄の香具耶姫に邪心を抱いていた(お約束)松永弾正・香具耶に惚れたはいいが女人恐怖症長尾(上杉)謙信、香具耶に恋をしたけれど鉄砲もなんとしてもほしい織田信長、玉藻にくっついて堺の軍師になっている父信虎を甲斐に呼び返したい武田信玄、頭越しに鉄砲の取り引きされちゃあ困る堺の千宗易とどえれえことになってしまいます。
全体にいい意味で軽く、すちゃらかかつ明朗な展開は楽しめますです。もちろん例によってその後の歴史展開とからました見せ場もてんこもり。


『戦中派不戦日記』☆☆(講談社文庫)98.2.22

当時医学生だった山風昭和20年の日記です。なんとなく敬遠していたのですが、カジュアル文語体が逆に読みやすいです。しっかし戦時下だっちゅうに、どっから持ってきたのか、露伴、鏡花、ゴーゴリ、チェーホフ、シュニッツラー、メーテルリンクにバルザックにモーパッサンetcやたらめったら読んでいます(少なくともよしのより・・・)。焼け出されても汽車の中で『谷間の百合』読んでますが、いったいこりゃどーゆーことなのだ?
一方では日本の根源的な科学力のなさ・生産力のなさと政府の詭弁を弾劾するような日があれば、フロベールの頑固ジジイな述懐引用してなんだか共感してたり、大空襲の跡を友達の安否を尋ねてさまよった日にはさすがにアメリカ人殺しまくれぇと燃え燃えだったり、いきなり日本の必勝確信したり、ほんなの嘘やああと書いたり、日によって様々な「山田雅也」の姿が現れて山風のものという意識を離れても興味深いっす。B29が来襲して超苦手な数学の進級試験が無試験になったときは「余も大東亜戦争は余のこの日のために勃発したるにあらずやと感涙にむせぶ」とかって、「戸田家の兄妹」見にいっちゃってます(三月四日)。学生ってそういう生き物だよね・・・
そんなこんなの中に、

○すべてを破壊すること、習慣、教育等有形無形のものの醸し出す幻の衣をいちどひっぺがして、「ほんとうのもの」を眺めること(一月一三日)

なんかは、表現若いですけど、忍法帖における身体の扱いなんか「ひっぺがし」たものであったりするわけで、やっぱ山風かもです。『十三角関係』「誰も私を愛さない」のネタとなったメモなんかも含まれているので、そのへん追及するのもぐーかも。しかし当時の地図をつけてもらえると、移動の記述とか多いんで助かったような・・・


『黒衣の聖母』(ハルキ文庫)98.1.25

表題作に「戦艦陸奥」「潜艦呂号99浮上せず」「裸の島」「女の島」「腐食の神話」「魔島」収録です。要は山風太平洋戦争ネタ短編集ですね。解説には戦争ミステリとありましたがほんとーにその総括でいいのか、ハルキ(汗
「黒衣の聖母」はとにかく、「戦艦陸奥」「潜艦呂号」あたり若書きは否めないところです。もちろん「物語」の中で展開される個々人の三角関係なり、「物語」が生み出した極限状況に置かれた人間の心理をメインにしているわけですが、一抹キレが悪いというか、まだ戦争という状況を借りて書いているだけで山風らしさが生きてこないというか、なんとも中途半端な印象です。それは、ただ事情で書き飛ばしちゃったとかそんなことではなく、まだ戦争という「物語」の外部にきっちり立てるとこまで行っていない居心地の悪さかもしれません。


『死言状』(富士見書房・角川文庫)98.1.25

エッセイ集です。『風眼抄』と一部かぶってますが、忍法帖誕生の経緯とか、文壇ネタは少なめで、累進課税を労働懲罰と呼んで以て日本人の働きすぎを矯正しろ!とか寝小便の話(子供の頃の思い出じゃなくて発表時の話らしい・・・)とかやんちゃなオヤジぶりてんこ盛りです。
風太郎夫人の作る食事はえれえうまいらしいという風評ですが、「チーズの肉トロ」ちゅーとろけるチーズを薄切りの牛肉に巻いて焼いたのが紹介されてました。あんましぎちぎちに巻くんでなくて、牛肉たたみながらチーズを巻き込んでいくという感じですが、作ってみたらおいしかったです。


『長脇差(どす)枯野抄』☆(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)98.1.19

表題作に「妖僧」「宗俊烏鷺合戦」「山童伝」「起きろ一心斎」「死顔を見せるな」「売色奴刑」「盗作忠臣蔵」収録です。
 「妖僧」は信長対妖しい坊主のお話、「宗俊」は小田原の(河内山)宗俊の異名をとるヤクザな医者がかけ碁で美女と百両を丸取りしようとしますが・・・というお話。「山童伝」は、石田治部の忘れ形見狭霧姫と、従者右近のお話、「起きろ一心斎」は、由比正雪のとこに偵察にやってきた老剣豪が懐柔だかなんだか若い女をあてがわれてほとほと弱るお話。「死顔」は「黒檜姉妹」とか怪奇探偵小説山風のテイストある睡眠剣法話、「売色」は南町奉行中山出雲守が、女性への漠然とした不安から心中の片割れで生き残ったり、主家断絶の原因となった女を、刑として吉原の奴女郎にしますが、なかなかうまく刑として機能せず・・・というお話。表題作はさわやかさっそう貸元としてデビューした忘れずの塔五郎が、たった二人の子供に追いつめられていくお話。「盗作忠臣蔵」は、浅野内匠頭刃傷事件のあおりをくらっていぢめられて主君は切腹、家は取りつぶし仕儀にいたった土岐家家中のあだ討ち譚。
色々入ってお買い得ですが、ううむ、いまいち奇想ぶり&山風テイストは薄めかも。


『八犬伝』☆☆(朝日新聞社・廣済堂文庫)98.1.22

前々から掲示板で話題になっていた『八犬伝』です。虚の世界・『南総里見八犬伝』と実の世界・滝沢馬琴の生活が織りなされて進行する体裁です。
実の世界は、一種の山風による虚構論となっていて、実の世界が不条理だからこそ虚構の世界を完全な正義&つじつまのあう世界として偏執狂的に構築しようとする馬琴・画業という虚の世界に没入し、実の世界を捨てて省みない北斎、虚が虚として完全であることのいかがわしさを告発する東海道四谷怪談を上演する鶴屋南北と三人の作家&画家が虚構に対する視点として登場している、とも読めます。
こんなものも書いてしまったよしのとしては興味深いところでやんすが、こういう読み方からみると、失明した馬琴とひらがなっきゃわからない嫁のお路が口述筆記で『八犬伝』を完成させるラストは、虚構を構築する快楽の強度であると同時に、ひょっとしたら虚構のなかに反世界を見いだす中井英夫かもしんないです。


『神曲崩壊』(朝日新聞社・廣済堂文庫)98.1.22

すちゃらか山風炸裂!
雪が降ってる静かなお昼に『神曲』読んでいた「私」は、気がつくとダンテさんとラ・ロシュフーコーさんに地獄巡りの案内をされることに・・・核戦争でメルトダウンしまくり、地球そのものがふっとんだ余波でぐっちゃんぐっちゃんになった地獄には、食欲やら性欲やら怒りやらで地獄落ちな亡者がいっぱい★
山風ねた帖という気もしないでもない一冊です。


『剣鬼と遊女』☆☆(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)98.1.8

表題作に「元禄おさめの方」「姦臣今川状」「筒なし呆兵衛」「紅閨の神方医」「陰萎将軍伝」収録です。いかにも山風テイストな佳品多し。「筒なし」は忍法も出てくるけど、他は戦国〜江戸後期を舞台とする短編でやんす。表題作は相馬大作事件裏エピソード、「元禄おさめの方」は五代将軍綱吉の子を産んだ側用人柳沢吉保の側妾おさめの方の謎、「姦臣今川状」は徳川・武田・北条に囲まれてるっつーのにのほほんとしすぎの今川氏真を守るべく「姦臣」三浦☆美少年☆右衛門がめぐらす奇策、「筒なし呆兵衛」は交合によって伝播する肌文字な忍法「筒飛脚」始末。「紅閨の神方医」は高貴な女体を見たーい&いぢくりたいの一念で奥医者に成り上がる万久里(まくり)小路馬竿齋(汗)一代記、「陰萎将軍伝」は徳川十五代でもっとも暗愚と定評の高い(らしい)十三代家定の心のナゾとあえていうならえろ系時代小説集。
この中でグレートなのは「元禄おさめの方」で、綱吉の子を産んだ吉保の側室・おさめの方めぐる綱吉・吉保・怪僧隆光・吉保の側妾町子の語りで、近代的自我とかうざってえことはきれえな山風らしい「おさめの方」が浮かび上がってくる好編でやんす。


『切腹禁止令』☆(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)98.1.8

表題作に「殿様」「一、二、三!」「三剣鬼」「嗚呼益羅男」「妖剣林田左文」「南無殺生三万人」でございます。
「一、二、三!」はなぜか肝心な場面で肥だめにはまってしまう幕末佐幕派テロリスト話。「三剣鬼」は暗殺された島田右近の妾おえんを狂言回しに幕末の京都で暴れ回った田中新兵衛や岡田以蔵らを描いた短編、徳川VS豊臣な時代を背景に「男根占い」おっぱじめ、気がつくとなにやら男根にとりつかれてしまった山寺竿兵衛のお話。「妖剣〜」は主君の死因を秘すために殺されそうになった側室お秀の方を守って逃亡する林田左文の兵法&魔性かもしんないお秀の方。
「南無殺生〜」は生涯通算3万の罪人(でない人もたくさん)の首を切ったと言われる初代火付盗賊改中山勘解由の生涯。これは役人つーかサラリーマン批判の意味合いも少々あるかもっす。波風も立ったけど淡々と首切りしまくった勘解由を淡々と書いているだけに逆にすごみもありましね。表題作は幕末に切腹という習慣の残酷さ、非合理さを知り、公議所(後年の議会)に「切腹禁止令」を提出した小野清五郎が切腹するにいたる顛末とネタはいろいろざんす。ああああ、時代がむちゃくちゃやからどのジャンルにいれたらええかわからん(涙)


『武蔵野水滸伝』(上・下)(富士見書房・時代小説文庫)98.1.8

らぶらぶな鳥居甲斐守の娘お耀と遠山左衛門尉の息子銀五郎。二人は鳥居甲斐守により関八州の治安を預かる八州廻りの統括を委ねられますが、あまりの現八州廻りのだらしなさぶりにあきれ、江戸で名高い千葉周作他八人に依頼することになります。最初は博徒をうまく解散させたりしてたんですが、だんだん役人の腐敗ぶりや政治のありように疑問を持ちだした銀五郎は赤城山の国定忠治の懐に入り込み、旗揚げやらかしてしまいます。同時に八州廻りの選に洩れた剣豪八人を交合によって他人に転生せしめる幻法「知行散乱」を使う怪人南無扇子丸(中身はキリシタン系謀反人水野軍記かも)は暗躍するは、転生した剣豪達は案の定魔人に変わっちゃうわの大騒ぎ。
面白くないわけじゃないけど、どーも大傑作『魔界転生』と比べたくなってしまう話の枠で損をしているかもしんない作品。『魔界転生』より時代が近い分無茶しにくいところもあるし。欠点があるわけではないけどちと外し。


『白波五人帖』☆(講談社・山田風太郎全集13巻)97.12.24

表題作に切支丹物に「みささぎ盗賊」に「降和変」に幕末物に明治物と脈絡ない巻です。とほほ。
「白波五人帖」は歌舞伎と実話をいっしょくたにして山風ひねりを効かせた連作。山風がひねれば、加賀騒動やら木曾川治水工事やら大騒ぎでございます。
あんまり文庫などで見かけないネタは、明智光秀大勝利バージョン「明智太閤」、ひょんなことから大名の世継になった小旅篭の息子を猿回しに当時の大名の生活を描いた「殿様」などなど。


山風ぢゃないけど『妖棋伝』☆(講談社・角田喜久雄全集)97.12.15

『風眼抄』なんかで山風が言及している作品なんで読んでみたですよ。昔『高木家の惨劇』は読んだけど、なんか地の文がねばっこすぎてやだったなあと思っていたら、やっぱりよしのの好みからはベタなリズム感ではあった・・・。縄術使いのおにいちゃんが、銀将の駒を握って「やまびこ・・・」とか口走りながら死んだ男に行き会う場面に発し、蔵前の札差、元関白側室を名乗る年増に、切れ者の八丁堀同心、お庭番やら謎の「縄いたち」を名乗る盗賊が、えっれえもうかるらしい謎をめぐって戦うわというお話。そこそこたまげる場面もあるけど、しかーし、肝心の謎の直接の受益者が結局出てこないとか、なんだかしりすぼみな印象もあります。山風は、「先がどーなるかわかんなくってドキドキした作品」として言及してたと思うけど、それは忍法帖がこの世に存在しなかったからかもです。まあ、山風マニアには押さえネタか。


『同日同刻〜太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日』☆☆(文春文庫)97.11.30

明治物の方法論を極限まで煮詰めて、「太平洋戦争を扱ってみた戦記物」というよりとにかく「山風」だよな〜という一本。戦争ネタ山風はなんとなく敬遠しているのですが、少なくとも明治物好きは読んだほうがいいかもです。回想録や報告書、日記やなんかをザッピングして編集し、ばらばらの視点からばらばらに経験された太平洋戦争ちゅーものを立体的に描き出しております。なんでばらばらなのに立体的なのか、なんで立体的なのにばらばらのままで読めるのかは忍法としかいいようがない山風マジック☆
よしのはマーティン・ジェイの『アドルノ』(岩波書店・同時代ライブラリー)で描かれたアドルノの思想のスタイルが、ひょっとして歴史小説家山田風太郎の方法に世界で一番近いんじゃないかと思いました。「星座」の概念とかね。『アドルノ』は専門的知識なくても面白く読めるブツなので、山風を「考えて」見たくなったときにはこの際推薦しますです。


『幻妖桐の葉おとし』☆(ハルキ文庫)97.11.3

いくつかこれまで読んだ範囲とかぶってるやつです。表題作は『不知火軍記』(集英社文庫)にも収録、「変化城」「行灯浮世之介」は連作『妖説忠臣蔵』で文庫版に収録されてないやつらしいっす。あちきは講談社の全集で読んだのに、「行灯浮世之介」読んだ覚えないちゅーのはどおいうことやろ。あと、江戸後期のやさぐれ旗本ネタ「数珠かけ伝法」、桜田門外の変ネタ「首」(『おれは不知火』参照)と世話物っぽい二編に加えて、「乞食八万騎」。「乞食八万騎」は「非人」の群れ+非人に同情的な江戸城火の番vs.へなちょこ旗本が江戸城開城前夜にからまりあう作。ネタ的には出版社びくびくものですが、差別する側のかっこ悪さがいかんともしがたく描かれているので、びくびくするこたねえだろって感じです。火の番の「非人に同情」な視線はちと居心地悪いですが、時代背景が時代背景なんでしょうがないっす。ラストシーンはカタルシスありますですね。


『死なない剣豪』☆☆☆(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)97.11.3

短編時代小説集。いかんともしがたくレベル高く、これは山風ファンならずとも時代小説好きは買っておくべきでしょう。秀吉朝鮮役のさなかに朝鮮・唐連合軍に寝返った日本兵の群像「降倭変」、大平天国残党の海賊話「幽霊船棺桶丸」、江戸時代初期の武士道「お玄関拝借」、鳥居耀蔵対歌川国貞「国貞源氏」(『忍法黒白草紙』「東京南町奉行」参照)、読んでるとこってりしたものが食べたくなる徳川「しぶちん」家康vs.茶屋「人生享楽してなんぼのもんや」四郎の「慶長大食漢」、伝説の剣豪伊藤一刀斎をめぐるわけわかんないミステリー「死なない剣豪」(『忍法剣士伝』参照)、ぷー時代の鳥居耀蔵VS相馬大作「お江戸英雄坂」収録。なんだかんだいって風太郎先生鳥居ネタおおいなー。


『いだてん百里』☆(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)97.11.3

忍法帖への大跳躍前の作らしいっす。『忍法封印いま破る』なんかにも出てくる「サンカ」のお話。時代は関ヶ原と大阪役の中間で、「サンカ」を利用しようとする大久保長安やら興行師となにやら戦ってます。被抑圧者の底力+奇想が時代小説と言う枠に載っているというところで、忍法帖の準備はおっけーというところですね。山風研究には外せないかもです。


『おんな牢秘抄』☆☆(講談社・山田風太郎全集11巻/角川文庫)97.10.10

南町奉行遠山越前守の息女霞が、女が女を裁くなら、もののあわれを知らぬ男が裁くのと違った裁きができると、6人の女囚の事件を再調査します。女賊「姫君お竜」として小伝馬町のおんな牢に入るわ、男装するわ吉原の新造に化けるわの大活躍☆んでもって連作を最後で一気にまとめ直して片つける、山風お得意テクニックで展開される大手柄でやんす。


『妖説忠臣蔵』☆☆(講談社・山田風太郎全集11巻)97.10.10

赤穂浪士討ち入りネタ連作短編☆ネタ的には『忍法忠臣蔵』とかなりかぶってますが、「忠臣蔵」物として読むならこっちのほうが面白いかもです。大石内蔵助の造形は共通していますが、連作短編というスタイルをいかして、様々な人物に焦点を合わせてより立体的な話になっています。「殺人蔵」は犯人消失型推理小説。もちろん千坂兵部様(愛)もご活躍☆


『婆佐羅』☆(講談社文庫)97.10.10

室町物3作目でございます。大暴れ後醍醐天皇から始まり、足利義満の登場までを、婆佐羅大名・佐々木道誉を狂言回しに描いていくスタイルです。やること派手だけど飄々としたエピキュリアン道誉はアクが抜けてなかなかのお味。晩年の足利尊氏の狂気はどすが利いてます。しかしMacのIM・EGBridgeにはデフォルトの辞書に佐々木道誉が入ってるのはなぜだろう・・・


『不知火軍記』(集英社文庫)97.10.2

切支丹物2つに秀吉の奥さんねね登板1つの短編集でやんす☆
表題作は『外道忍法帖』登場の天草扇千代君VS小西行長孫娘の不知火姫。不知火姫は強いわ頭いいわ人生に気合い入ってるわのナイスな美人☆『外道』の怨念めらめら天姫もいいですが、たぶんこっちの方が扇千代君は納得して死んだことでしょう(笑)。短編としての完成度はありますが、長編で読みたい作品ですね。扇千代ってなんか切支丹用語で似た音の言葉があったと思ってたけど、異教徒(ぜんちょ)のようです。
んで「盲僧秘帖」は山風にはレアな毛利元就VS山内・陶を背景に、聖なるバカ対陰謀馬鹿。陰謀馬鹿の蝶丸はなかなか哀れです。「幻妖桐の葉落とし」は秀吉が死ぬ直前に示した大坂城の抜け穴の謎の絵図面を解くべく大阪派の長老が四苦八苦するも、なぜか解きかけると事故死してしまい・・・というミステリかもしんない作。『叛旗兵』参照。


『風眼抄』(中公文庫)97.10.2

エッセイ集でやんす
本の話、雑事の話、歴史の話、乱歩他いちおー文壇な話といろいろです。「麻雀血涙帖」は、『叛旗兵』で薄々勘付いてたけど麻雀好き(しかも弱いらしい)な先生の日常、「春愁糞尿譚」は「うんこ殺人」の作者らしい衝撃的なスカトロネタ(こんなことってほんとにあるの?)。乱歩の思い出はなかなかしんみりです。


『売色使徒行伝』☆☆☆(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)

切支丹物短編集。かなりいっちゃってます。山風の短編では一二を争う大傑作「姫君何処におらすか」、奇跡が崩壊してゆくカタストロフ「スピロヘータ氏来朝記」、転び切支丹の娘が信仰に殉じて生まれる奇跡「邪宗門仏」、姫君に恋をしたばかりに奇跡を生み出し続ける男の奇跡「奇跡屋」、「山屋敷秘図」では転び伴天連炸裂!(ネタがかぶっている坂口安吾「イノチガケ」と比べて読みもグーか)、そしてえろえろな表題作「売色使徒行伝」とテンション高いっす。
「姫君何処におらすか」は切支丹禁制は解けていないけれど在留外人のための教会の建設はアリになった幕末にたまたま一神父が接触した離島のはぐれ切支丹のお話なのだけれど、ムダのない構成、長い閉鎖された状況でひずんだ信仰体系の設計の巧緻さ、賛美歌もどき「ベレンの国の姫君/今はどこにおらすか」云々のナイスな小道具、哀切かつ心胆冷えるラストと、恐ろしいのに恐ろしいほど魅惑的な作品ざます。日本語ネイティブに生まれた喜びをかみしめられますですよ。


『叛旗兵』☆(角川文庫・廣済堂文庫)

関ヶ原の合戦と大阪の役の間の緊張した時代、関ヶ原の時あくまで家康にさからって筋を通した上杉家の家老直江山城守の下に集ういずれも一癖ある四天王が、山城守の養女伽羅姫の依頼によって、大谷刑部の遺児ということになってるけど根性全然ない伽羅の婿左兵衛を鍛える&伽羅の婚礼の時にいやがらせしやがった大名四人に反撃するとゆーお話。大久保長安宅の女体風呂(とは言ってないけどさ・・)や武蔵&小次郎がほにゃららするあたりかなり笑える。テーゼとしてはバカは重要であるというところでしょうか。最後の一段落はぶったまげます。マジかいそりゃ。


『ありんす国伝奇』(富士見文庫)

タイトル通り、お江戸の吉原を舞台にした短編集。「傾城将棋」「剣鬼と遊女」「ゆびきり地獄」「蕭蕭くるわ噺」「怪異投げ込み寺」「夜ざくら大名」の六編です。一応登場人物が連続していないこともないので連作短編集ということですか。松葉屋の花魁薫は金蓮様(→『妖異金瓶梅』)のテイストあります。
「傾城将棋」は野暮を決め込んで廓法をやぶった弟を取り返した秩父屋と薫の駆け引き、「ゆびきり地獄」は勝海舟パパの勝小吉を狂言回しにした、切られた指を集める花魁小式部のお話。「蕭蕭くるわ噺」は「傾城将棋」の冒頭で切り見世に追放された遊女山弥の悲劇、「怪異投げ込み寺」は絵を描くことをめぐって展開されるお話で、薫の金蓮様度が一番高いかもしんないです。「夜ざくら大名」は薫の禿だった花魁さくらを中心に水戸徳川家斉昭に河内山に大岡越前を配した豪華キャストでお送りしてます。


『妖説太閤記』(講談社大衆文学館文庫)

風太郎太閤記は、秀吉という男の陰惨さを強調したバージョン☆ なんたって木々高太郎の正嗣な作ともいうべき『虚像淫楽』の作者ですから、その陰惨さ、欲望の展開の見せ方には技が効いています。あ、そうそうここでは「本能寺の変」は秀吉の仕込み説☆が取られています。


『柳生十兵衛死す』(講談社──と思ってたら毎日新聞社でした。ごみーん。最近小学館文庫版が出てます)

くー、こ、これわ・・・十兵衛ラブラブのよしのさんにはこの作品の十兵衛はまったく納得いかん。おなじみ柳生十兵衛と、室町時代は足利義満な頃のその御先祖さまがそれぞれの友達である能の達人に引きずられて入れ替わってしまうわ、それぞれが巻き込まれた皇室がらみのピンチな状況は紛糾していくわと作品としては凝った仕掛けになってるけれど、んでもって時空が入れ違う時とかものすごくアドレナリンの出るシーンもあるけれど、それでもピンチになったときはともかくまったりしてるときの十兵衛のあの無邪気さというものが弱すぎるぅぅ。「十兵衛死ぬの見たくないからよまな〜い」と読まないことにしている築山師匠(十兵衛らぶらぶ友達・・ウソ)は正しかった(涙)。

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