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探偵小説 特に記載のない物は廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全


「下山総裁」☆(後藤さんに送っていただきました)98.11.23

山風にはたぶんこれ一作な、実際の事件から書かれた短編推理です。タイトルのように、戦後怪事件ベスト5には入る、下山事件がお題ざんす。入手困難作なので、がんがんねたばれだ!
首きり人員整理やらストやらで、国鉄労働組合と国の緊張がどーしょーもなく高まった昭和24年6月、性欲に不自由な組合員日下部和吉は初恋の娘栄子に再会します。しかし教師の娘で当時の和吉には高値の花だった栄子は、身なりは資本家で下山国鉄総裁に良く似ているのに、どうも影で秘密組織を組織してなにやらたくらんでいるらしい謎の紳士・「赤外先生」の妾になってますです。鬱屈付和雷同組合員だった和吉は、知人の活動家弓削にあおられ、栄子を鼻先にぶら下げられて下山暗殺の実行犯となりますです。
ポイントはその暗殺の実行のされ方で、下山事件が迷宮入りしたのは、(1)被害者である下山総裁の事件当日の足取りが不可解(2)線路上で発見された死体は死後れき断されているのだけど、死因がはっきりしない(3)発見された場所は警戒されていた地域なのに、どうやって入り込んだかわからない、という3点にあったのですが、山風は(1)被害者を誘拐し以後赤外先生が入れ代わって、被害者を直接知らない人々に姿を印象づけて、のちに証言させた(2)食物を与えずに監禁し、ほげほげ(ねたばれすぎるのでないしょ)な方法でショック死させ、捜査の混乱を誘った、(3)ついでに貨物列車の上に死体をのせて移動させた、という具合に説明しています。
オチ的には、和吉とほほオチなのですが(お約束だね)、「全労働者のために!!」とかいいながら所詮動機は性欲さっヽ(´ー`)ノ、とか持たざるもののねばねばした恨みとかは、『太陽黒点』とかの系譜にあるかもです。


『天国荘奇譚』廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)98.7.27

山風の少年時代をベースにした但馬の田舎の旧制中学の寮を舞台に寮の天井裏に勝手に建築した「天国荘」(『青春探偵団』参照)を根城に悪ガキのわけわからん糞尿愛好いたずらが無目的に炸裂する(思春期ってそんなもの〜)表題作に、夫に虐げられているかつての恋人と出会った医師が、旧友の探偵小説家「山田風太郎」に出す書簡体小説「恋罪」、首の回らない学生達が、一夜でもっとも美しい恋人を得る賭けをするけれど、つかむのはとんでもない恋人ばかり・・・な「ドン・ファン怪談」、結婚を前に相手が童貞かどうか確かめたいとする女心でうっかり試験をしたばっかりにの書簡体な喜劇「童貞試験」、自尊心を傷つけられた書生の深謀遠慮な復讐譚「寝台物語」、小心な男が一年を限って放蕩のかぎりをつくしたり、やな奴になってみたりという実験を繰り替えした果てについに殺人を思いついて・・・という「大無法人」(戦後若者vs.戦争で享楽しそこね中年という意味ではちっと『太陽黒点』の陰画かも)、米ソ水爆戦争のさなか、台風で隔絶されてしまった山あいの温泉町での転向また転向なスラップスティック「臨時ニュースを申し上げます」収録でやんす。

「恋罪」「寝台物語」やなんかは陰惨ですが、おおむねおちゃめ系山風という印象の一本。


『帰去来殺人事件』(出版芸術社)98.7.21

新宿裏の壁も筒抜け安アパート・チンプン館で夜のおねいさん相手に闇堕胎医者やってる名探偵・茨木歓喜物の短編集です(そして長編といえば名作『十三角関係』)。収録はチンプン館ならではの密室トリック「チンプン館の殺人」、見世物用に笑い顔に整形されて売られ、流浪の末日本に帰ってきた男を傀儡にした復讐譚「抱擁殺人」、知的障害をもつ子が何度もさらわれる不可解な事件が発端となる遠隔殺人「西条家の通り魔」、近代的な病院を舞台に猟奇な連続殺人が始まるアリバイトリック「女狩」(犯人濃くてなんか歓喜はついでに出てきたかっつー印象も)、『十三角関係』の原型かもしんない(でもかなり違うけど)女郎屋の「マダム」搭載「お女郎村」、怪盗七面相と称する盗賊に財産の大半である美術品を盗まれた上に顔に硫酸をかけられてしまった若き公爵をめぐる謎「怪盗七面相」、縊死偽装トリック「落日殺人事件」、そしてある寒村とどろどろ人間関係を舞台に展開される表題作です。著作リストつき。

「西条家」を除いてあとは動機は復讐が目立ち、概して暗い舞台も相まって探偵小説〜という感じです。


『赤い蝋人形』(廣済堂文庫)98.3.17

実際の事件をモデルにした電車火災事故から始まる少女小説の旗手な女流作家の謎を描く表題作、プロバビリティーの犯罪を扱った「賭博学体系」、吝嗇な古本屋あがりの金貸しに利子を払う代りに養えと連れてこられた金貸しの妾にはまってしまう小説家のお話「美女貸し屋」、終戦直後、金を払った街娼(ともみえない美人)が人妻としておさまってんのを見て悪心起こしちゃった保険屋のとほほなお話「とんずら」、むちゃくちゃ後味の悪いお話「わが愛しの妻よ」(『極悪人』にも)、岡ぼれした娘が強姦されたと行方をくらましちまい、その復讐に犯人の妻や娘(かもしんない)女性たちを強姦することを志してしまう困ったお話「痴漢H君の話」、うっかり成功したばかりに親戚縁者からぶらさがられる工場主がキレるお話「ダニ図鑑」収録です。
強いて言うなら人生な罠として作動しちゃう女VSみすみすはまりこんでしまう男心の曰く不可解な作品の多い短編集。


『天使の復讐』(集英社文庫)98.3.17

同タイトルの短編集が廣済堂からも出てますが、こちらは「狂風図」、表題作、「色魔」「鬼さんこちら」「飛ばない風船」「知らない顔」収録の山風ミステリ集です。
「狂風図」は終戦まぎわの医学生の心理闘争(要参照『戦中派不戦日記』)、表題作は「天誅」と同じく天衣無縫な復讐譚。「色魔」は病院内しがらみ色事から発する看護婦殺人事件、「鬼さんこちら」「飛ばない風船」はちと社会派っぽいかもしんない割とストレートなミステリーでありんす。「知らない顔」は山風らしい一編で、自分とそっくりな暴行殺人犯がいることに気づいた男の心理の揺れ動きからどんでんかます佳作。


『極悪人』☆(双葉社)98.3.8

近所のらんぼー者にレイプされちまった妻から発して「正論」が変質し破れていく様を描く「わが愛しの妻よ」、老若マスオさんの心理「この道はいつかきた道」、売れない作家が取材のために真の「極悪人」をさがしてさまよう表題作、若いころいいなと思っていた相手とばったり旅先で再開したことから始まるどろどろな悲劇「吹雪心中」、なんでここに入ってるのか誰にもわからない関ヶ原を舞台に繰り広げられる忍者達の反間苦肉「天下分目忍法話」、慈善家なおばさんのやらかしたささいな出来事が雪だるまにふくらまっていく「環(わ)」とみすてりな山風の一冊。犯罪も出てきますが、どっちかっつーと悪をやらかしちゃう人間の心理が主軸です。
おまけで金ネタのエッセイ「現代妖怪譚」、筆名ネタの「変ねえム」、吉川英治『宮本武蔵』ネタの「あげあしとり」が入ってます。


『満員島』(春陽堂・長編探偵小説全集 S31)98.2.5

たぶんハルキ文庫&廣済堂文庫でだいたいゲットできる内容です。人口調節のために開発された制欲帯のスラップスティックな大騒ぎの表題作の他に、はなれ切支丹で、骨がただ軟化していく奇病にかかった娘との愛欲図「蝋人――新牡丹燈籠――」、アプレな戦後の聖処女の物語「新かぐや姫」、国電の車両炎上事故に巻き込まれた編集者が見た高名な少女小説家をめぐる悲劇「赤い蝋人形」、戦争終結まぎわの疎開中の医学生たちの心理闘争を描いた「狂風図」、手記の中に埋め込まれた手記で展開される「死者の呼び声」、プロバビリティの殺人を犯したはずの犯人のその後の心理を描く「ノイローゼ」収録です。


『白薔薇殺人事件』(三一書房・香山滋全集別巻)98.2.5

みもさんからご教示いただいて読んでみました。いわゆるリレー小説って奴です。メンツは香山滋(『ゴジラ』の原作者として有名)、島田一男、山田風太郎、楠田匡介(よくわからん)、岩田賢(よくわからん)、高木彬光です。夜道を歩いてた画学生がふと路上に投げ落とされた血まみれの白薔薇に引かれて無人のビルに上がってみると、若い女の死体がっという発端に始まり、すちゃらかに展開されていきますです。山風のパートは謎をあおる部分なのですが、たんたんと山風です。オチはいきなり某探偵が出てきてちゃっちゃとまとめてしまうよくわかんないノリ・・・。香山滋と山風と島田一男って宝石同時デビューだったみたいです。ああああ、しかし、この香山全集くらいに作品まめに収録して資料を十分校訂した山風全集欲しいですよ(滝涙)


『妖異金瓶梅』☆☆☆(大日本雄弁会講談社・S29発行)98.1.29こちらに廣済堂文庫版へのレビューがあります)

さすがにうちの大学図書館にも山風新ネタが尽きてきたぜと思っていたら、じつわ上の方にひっそりありました『妖異金瓶梅』!!しかもこんどわ毛筆による献呈入りだあ
収録作は「漆絵の美女」「西門家の謝肉祭」「赤い靴」「銭鬼」「美女と美童」「変化牡丹」「閻魔天女」「麝香姫」と現在の廣済堂文庫版より少ないのですが、その後の単行本には収録されていない「銭鬼」があります。
初夏のある日、西門家の手代でウルトラ吝嗇家の韓道国の元主人・宋鉄棍がやってまいります。鉄棍は以前花火製造業をしていたのですが、現在は錬金術にくら替え中。西門慶をうまくのせて、鉛を銀に変える九環丹製作に取り掛からせます。ところがその作業をしているうちに、西門慶は鉄棍の元妻で、現在は韓道国の妻となっている、不潔なだらしない感じだけど妙に淫心をそそる揺琴とできてしまい、揚げ句の果てに道国から35両で買って第七夫人にしてしまいます。収まらない金蓮は仕返しに道国を誘惑しますが、とにかく金の亡者である道国はひっかかりません。「奥様・・・そういたしますと、手前に何両くださるのでございましょうか」とまで言われて金蓮様あぜんです。
淫心を起こして作っちゃならない九環丹製作は失敗してしまい、鉄棍の欺瞞を見抜いた応伯爵は分け前をよこすことを条件に西門慶をあおって再度挑戦させますが、鉄棍が西門家を離れる前夜、鉄棍があげた花火を見物している時に、いきなり矢が射こまれ、妾たちにいびられまくりで東屋に残っていた揺琴が殺されます。おまけに鉄棍は九環丹を作る竃の中から黒焦げで発見されます。道国は体一つで逐電して、数日後、ため込んだ金を懐に西門家で毒死しているのが発見されます。道国が犯人だったんだろう、ということで一応一件落着するのですが、応伯爵が発見した真相は・・・
「銭鬼」が後の版で収録されていないのは、山風の判断らしいですが、トリックも水準以上だし、収録すればいいのに〜という一編。まあ、金蓮様の誘惑にのらない男って、形容矛盾かという気はしますが。


『奇想ミステリ集』☆(講談社文庫・大衆文学館)97.11.30

主に昭和20年代後半に発表された探偵小説系作品集です。トリックとかそゆのより、心理の動きがメインですね。なんだかアプレなご時世を背景にした「新かぐや姫」「二人」、夫婦/男女間の無限後退していく心理を材にとった「女妖」「ノイローゼ」「墓掘り人」「笛を吹く犯罪」「不死鳥」、軽いコントって感じの「露出狂奇譚」「祭壇」、昭和版「国貞源氏」かもしんない「春本太平記」、子供の心理をつかった「青銅の原人」「目撃者」、そして盲目の女性を使ってアリバイ偽造物だけど、ラストでうれしくたまげざるをえない「司祭館の殺人」と妙にもりだくさんな気のする短編集です。さすがに「虚像淫楽」「眼中の悪魔」などの圧倒的な完成度にはいささか及ばずというところですが、この系の山風がお好きな方には十分楽しめる一本です。


『男性滅亡』(ハルキ文庫)97.11.12

セックスネタナンセンス小説「男性滅亡」「男性周期率」、SFなのかなあな「1999年」、男性性欲ネタのコント「自立神経失調同盟」、記憶喪失なヒロインをめぐる六人の男のミステリ「誰も私を愛さない」でやんす。最初の3編はちとだるいか。やっぱ山風の奇想は歴史につっこんでこそ走るかっつー感慨もないわけでもないですね。「誰も私を愛さない」はヒロインが誰なのかという興味で読ませる形式ですが、冒頭のシーンでわりとわかります。でもどんでんありますのでご安心をば。(これってネタバレ?)


『太陽黒点』☆☆(講談社・山田風太郎全集15巻 廣済堂文庫)97.11.3

そのむかし〜、なんか太陽族ちゅーのが流行ったらしいんですが、その戦後のそれなりにちょこざいな希望をもってなんだか享楽している若人VS陰惨戦中派、というところ。推理味は薄いです。あんまり書くとねたバレになりますが、主人公なカップルの他の可能性はいくらでもあるのにどんどこ狭窄して追い詰められていく心理の動きなんかはさすが山風。
その後廣済堂文庫より文庫が出ました。(98.6)


『厨子家の悪霊』☆☆☆(ハルキ文庫)97.9.7

探偵小説家山田風太郎の魅惑てんこ盛りの短編集
とにかくどんでん返しかませまくることに集中した怪作「厨子家の悪霊」、土俗な味の出ている「旅の獅子舞」、山風が書かなかったら安吾が書くしかない「天誅」、そして名作「眼中の悪魔」「死者の呼び声」および大傑作「虚像淫楽」でやんす。
「虚像淫楽」は一年前結婚して辞めた元看護婦がある日「昇汞を飲まされた」と担ぎこまれてくる冒頭から、徐々に死に近づいて行きながらも何が起こったか沈黙を守る彼女をめぐって、「彼女は何を欲したか」な心理物。愛の対象の横滑りな転換と反転、あたくしに能力がありさえすれば英訳してジジェクに送り付けてやりたい逸品。ところで先生の英語圏進出はどーなってるんすかね。忍法帖なんかむちゃツボにはまると思うのだが・・・


『怪談部屋』☆☆(出版芸術社)97.9.7

あんま怪談じゃないんすけどね・・・、他SFから綺談からコミコミなジャンルとしての「探偵小説」短編集。その意味で『跫音(あしおと)』とネタかぶってますが、男体の神秘☆なスラップスティック「陰茎人」、お話はしょーもないっちゃあしょーもないけどこのタイトルの前には沈黙せざるをえない「うんこ殺人」、すげー変な展開なのに叙情的という乱歩の味のある「蝋人」収録というところでお買い得か。まあSFもどきあんま面白くないんすけどね(汗)。推理小説著作リスト付き


『十三角関係』☆☆☆

戦後の一応落ちついてきだけどまだまだダークな東京が舞台。猟奇なオープニング、すごみの入った犯人の動機、トリックやら中盤のミスリーディングやらどこをどうとっても第一級の探偵小説。茨木歓喜シリーズの代表作(他に『帰去来殺人事件』など)にして山風長編推理小説の最高峰といえましょう。よしのさんは探偵小説好きを自認しながらこの年まで読んでいなかったことを深く恥じております。講談社ノベルス『甲賀忍法帖』解説で有栖川有栖も絶賛☆


『妖異金瓶梅』☆☆☆

金瓶梅ワールドに材を取った連続短編。富豪にして絶倫さんな西門慶と様々なタイプの美貌な夫人達。しかーしなぜか怪奇かつ不審な死が相次いでいきます。西門慶の友人にして半分太鼓持ちの応伯爵は謎をとくのですが・・・
 「赤い靴」「美女と美童」「閻魔天女」「西門家の謝肉祭」「変化牡丹」「麝香姫」「漆絵の美女」「妖瞳記」「邪淫の烙印」「黒い乳房」「凍る歓喜仏」「女人大魔王」「蓮華往生」「死せる潘金蓮」の14編(あとほんとは「銭鬼」というのもあるけど山風が再録させないらしい)ですが、ラスト二編のカタストロフィぶりはアドレナリンでるっす。個々のトリックはそれほど目新しいものはないけれど、時代設定の妙、どの作品も犯人同じというアイデアのものすごさで全部ちゃらです。
未読の方は、速攻本屋に走り、空前絶後の名犯人にして山風が生み出した女性登場人物で一二を争う潘金蓮様の前にひれ伏すことを熱烈推奨しますです。
実はこれがよしのが最初に読んだ山風で、そんときゃ(大学二年)面白いな〜と小説としての面白さはわかっても、金蓮様のすごみはいまいちわかんなかったのですが、その後ぷちぷち経験値あがったのか五年ぶりに再読してよーやくわかりましたです。読んだけど〜、いまいち〜という方は何年か寝かせておくのもぐーかもです。なお、橋本治『秘本世界生卵』に潘金蓮論が入ってたよーな気もしますです。


『誰にでもできる殺人』☆☆

 連続短編型。「女をさがせ」「殺すも愉し」「まぼろしの恋妻」「人間荘怪談」「殺人保険のすすめ」「淫らな死神」でございます。「人間荘」(すごい名前だ・・)という安アパートの一室の押入の奥に押し込まれた一冊のノートに代々の間借り人によって書きつがれた物語。殺人あり、事故ありと不穏な「人間荘」に隠された秘密とわ・・・。
 最終話「淫らな死神」の結末はどすきいてます。


『棺の中の悦楽』☆(講談社文庫コレクション・大衆文学館)

いわゆる一つの異色ミステリーってやつです。変ないきさつから横領犯に現金1500万円(初出はS36年ざます)預けられた脇坂篤。初恋の女を忘れかねてどうにもすすけた生活送っていたのだけれど、まあ人生色々ありまして、横領犯が出所するまでにきれいに金を使い果たして死んでやろうということになりました。というわけで半年の期限を切って、三年間で六人の女と所帯をもってみるのですが・・・というお話。惚れ方間違えるとかくも人生ひずんでしまうかというところ。関川夏央のエッセイと縄田一男の「人と作品」つき。


『青春探偵団』☆

「幽霊御入来」「書庫の無頼漢」「泥棒御入来」「屋根裏の城主」「砂の城」「特に名を秘す」の六作品。すべて同一舞台&登場人物で、北国らしき地方の高校生の「殺人クラブ」の活動&冒険でやんす。そんなにむちゃくちゃ面白いわけではないけど、高校生の他愛ない生活は楽しいっす。天国荘が出てきたりもしますが(「屋根裏の城主」)、浜辺で高校生が「森の木陰でどんじゃらほい」を踊り狂うシーン(「砂の城」)があるのがむちゃむちゃ不思議。


『跫音(あしおと)』(角川ホラー文庫)

ホラー文庫となっていますが、昔の新青年系のホラーと言うより奇談というかミステリというか、当時はええかげんにも「探偵小説」と呼ばれておったような作品集というところ。収録作は、飛行機墜落事故を素材にした「三十人の三十時間」、東京大空襲の運命な夜が蘇る「さようなら」、死刑執行前の心理描写のしつこさが出色「女死刑囚」、人のよさゆえに罪を犯した男の崩壊な表題作、山陰の旧家で絵師と呪われた絵をめぐる謎といえばどろどろなのに妙に軽い味わいの「雪女」、この辺が新青年テイストなサーカスは空中ぶらんこ乗りの毒婦のお話「笑う道化師」、めっぽう色っぽい女給をめぐる男たちの蠢動「最後の晩餐」(これイチ押し)、なんか書くとネタバレになってしまうので何も書けない(笑)「呪恋の女」です。解説は山風愛好家として名高い菊地英行。
不吉なまでに醜い女医の秘密「双頭の人」、近親結婚ただれ系旧家を舞台にした「黒檜姉妹」なんか読むにつけ、どうもこの当時の先生は理性ある人間としての女性/白痴的えろえろ女性とか、ベアトリーチェ的女性/娼婦的女性などなどな女の二重性に心引かれていたのかも。


『夜より他に聴くものもなし』(廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全)

靴底すり減らし系の刑事さんが主人公の連作短編です。結末はどれも同じ言葉で終わるというひねった造りになっているのですが、若干それが暴走して、そのセリフを言えない相手に向かって言っちゃったりしてるのは、作品内のリアリティの構築が非常に丁寧な風太郎先生らしからぬ手落ちです。なぜかヴェルレーヌの詩からとったタイトルかっこいいし、そこそこの作品も入ってるんですけどでも全体としては勧めるわけにはいかないです。

 

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