山田風太郎ってどんな人?


大正11年兵庫県生まれ。東京医科大学卒。S22「達磨峠の事件」で『宝石』(乱歩がしきっていた)デビュー。S24年『眼中の悪魔』『虚像淫楽』で探偵作家クラブ(現・日本推理小説家協会)賞受賞。
その後十年くらい探偵小説家として活躍。S33年『甲賀忍法帖』発表。以後15年くらい忍法帖を書き続ける。S51年忍法帖もうやめた宣言をし、以後明治物切支丹物・室町物などそれまで歴史小説の鬼門とされていた時代を舞台にした異色歴史小説を書く。現在第三次ブレイク中。最近は随筆『あと千回の晩餐』が話題になっている──というあたりがおおざっぱな略年譜でございます。あ、97年10月「菊池寛賞」ゲットされたらしいっす。どういう賞なんだかよしのはいまいち知りませんが、ともあれめでたい☆(えーかげん・・・)。そして2001年3月「日本ミステリー文学大賞」ゲット……ってこれも新設の賞なのかなあ?よくわからん業界の事情が働いてそうですが、ところでノーベル文学賞ってのわダメですか?(マジ)


風太郎先生の魅力(ちゅーか魔力ちゅーか)

色々あるし色々語られていますが、端的に言って面白い!というのは別として、「女」の書き方が日本の作家とは思えんくらいナイスというところをよしの的には重視しています。少なくとも本気出して書いたキャラクターに関して、「女」一般のイメージにまったくよりかかっていないってことですね『十三角関係』『妖異金瓶梅』などに典型的に見られます。ふつーの批評というものができない作家の場合は、女一般を弱者に設定しておいてそれを反転させて恩にきせますが、そんな下劣なことはなさらないし。
初期の「黒檜姉妹」や「双頭の人」の世間に流通している女性イメージへの批評ぶり、『笑い陰陽師』やその他もろもろの実験君忍者が、性的身体なりジェンダーなりをわけわからん論理で脱構築(もはや死語・・・)していく様とか、もはやフェミニズム文学でわないかとも思ってます(かなりマジ)。その筋の方もハラウェイのサイボーグ・フェミニズムとか日本で語ってどうこうするより、くノ一を早く発見してほしいものざんす。
イメージによりかからずに話が作れるということはつまり、人間心理についてものすごく精密な洞察力がありかつ徹底した唯物論者であるとも言えます。探偵小説のいくつかは木々高太郎の精神分析の手法を自家薬篭中☆なものも見受けられます。もちろん心理をただ解剖していくわけはなく、時には皮肉な、時には叙情的な目線で描いていく手法にはもはやめろめろっす(ちゅーか、目線の混ざり具合がよしのの性に合うのかも)。それに加えて忍法帖に見られる奇想、『至福千年』(石川淳)に比すべきルーティンをあえて壊してかえりみない気合い、まさに昭和最強の作家といえましょう。

付記;あたくしは山風読解において「バカ」と「馬鹿」というカテゴリーを立てています。「バカ」は『魔界転生』の柳生十人衆(自称)に見られるように人生が「十兵衛様についていく☆」とか具体的な目標によって純粋化されているような人たちです。バカです。すがすがしいです。人間こうあれたら人生簡単に元とれます。「バカ」が行き過ぎると世の掟を踏み越えて「伝馬町からこんばんわ」のような「魔人」にいっちゃいますが・・・(汗)。「馬鹿」の方は書かれざる囲いの外で話が動いちゃってることに気が付かずに、狭いところでちまちま政治はったり、わけわかんないものにひきずりまわされたりして、ちととほほです。んでもって風太郎先生はバカをおおむね愛し、馬鹿の論理&魔人の恐ろしさを余すところなく解剖なさるのです。

どうやったらゲットできるのか

本屋や古本屋では、文庫を出版社別にわけてあったりします(少なくとも古本屋は著者順に分けろ!)。それでさんざん泣かされもしたので、チェックすべき出版社を素人ながらご紹介でやんす
古本屋の場合、「時代小説」コーナーを別枠で作っている場合が多いので、そっちにつっこまれていないか要チェック。基本的に古本屋では山風は恒常的な品薄状態なので、見つけたら即買う、もうあったかなと迷ってもとりあえず買う、を徹底したいものです。だぶったやつは、バックアップとして保存するなり友達に布教するなり。
一度に何冊買ってもとにかく読み切るまで読んでしまうよしのは、角川文庫の塊見つけたのに「今日は仕事あるから明日にしよお♪」と翌日にまにましながら古本屋再訪したところ、速攻絶滅してしまっていた思い出すだに落涙なつらい過去もありますのでご注意(再度涙)

新刊で買うなら
新刊についてはとにかく角川文庫がうらめしいっす。忍法帖の代表作が本屋にならんどらんというのはどーいうこっちゃ・・・版権の関係がどおなっとるのかよしのは寡聞にして知りませんが、両書店の読者カードを入手したら、必ず「風太郎の忍法帖をさくさく復刊せい!」と書いて出しましょう。(いや、マジで・・・)
 

光文社文庫・山田風太郎ミステリー傑作選

 日下三蔵さま編集の推理小説&にせSF系統の作品の選集です。『眼中の悪魔』・『十三角関係』・『夜よりほかに聴くものもなし』・『棺の中の悦楽』・『戦艦陸奥』・『天国荘奇譚』・『怪談部屋』・『笑う肉仮面』・『達磨峠の事件』と予定されています。
 路線的には「廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全」ですが、こっちの方がはるかにネタが豊富なんで、廣済堂買っちゃったひとにもお勧め。
 おどろくべきはこの内容の濃さ。基本的に長編1本+中短編はいるだけはいってるんですが、『十三角関係』は表題作に歓喜物ひととおり揃って857円! 単行本2冊分の内容だよなあ……どう考えても。『眼中の悪魔』も表題作に「虚像淫楽」「厨子家の悪霊」『誰にもできる殺人』他名作傑作てんこ盛りです。少なくともこの2本はゲットでしょう。
 山風にもデフレの波かっというきもしないでもない、このお値打ちさ。

講談社文庫・山田風太郎忍法帖

 講談社ノベルスの「山田風太郎傑作忍法帖」の文庫版という企画なんでしょうか? 現在一番ゲットしやすい版です(ていうかまだ刊行終わっていない)。「甲賀忍法帖」「くノ一忍法帖」「忍法忠臣蔵」「伊賀忍法帖」「忍法八犬伝」「柳生忍法帖(上下)」とでましてあと「魔界転生(上下)」「江戸忍法帖」「風来忍法帖」に短編集「かげろう忍法帖」「野ざらし忍法帖」「忍法関ヶ原」と出る予定。(99.07.20現在)。
 しかしよしのの熱愛する大久保長安系「銀河忍法帖」&「忍法封印いま破る」あたりノベルスにははいってるけど文庫ではぬけてるぞ!をい!・・「江戸」「忠臣蔵」いれるんだったら「銀河」の方がおもろいぢゃんよ〜
 表紙絵天野喜孝は賛否別れるところですが・・よしの的にはへんにデザインされた本文も気にいらない・・角川文庫に慣れちゃってるからねえ・・
まあでも親しい方へのプレゼントに、文庫はいたみが速いですから老後用のバックアップにいまのうちにそろえておくのが吉か・・
 

ちくま文庫・山田風太郎明治小説全集

 読んで字のごとく、明治物の全集です。ちくまだけあって定価がやや高めなのが難か。平行して家宝にしたいハードカバー版も刊行中。大きな本屋の方が探しやすいですが、さくさく発注かけてそろえてしまうのもぐー。外れないし。
 

廣済堂文庫・山田風太郎傑作大全

 探偵小説&非・忍法帖歴史物が中心。幕末股旅物とか探偵小説とかずっと放置されてきたネタも復活しています。カバーイラスト(山本タカト・毛利彰)は素晴らしいです。背表紙は廣済堂文庫おなじみの真黄色(第一期)&焦げ茶(第二期)。それなりに大きい本屋だと、既刊分もそろえてあったりするので、速攻買いあさりましょう。といってる間に第二期『太陽黒点』で勝手に完結されてしまったあああ!思い直せ廣済堂文庫!忍法帖傑作大全も出せ!これも読者カードを入手したらばドツキいれましょう(涙)
 現在書店の店頭にはほとんど出てません。押さえたいネタはさくさく発注かけて速攻買いあさりましょう。
 
収録作品はこんなかんじっす
妖異金瓶梅(連作短編)
十三角関係
修羅維新牢(連作短編)
誰にでもできる殺人(連作短編)
売色使徒行伝(切支丹物短編集)
表題作・「姫君どこにおらすか」・「スピロヘータ氏来朝記」・「邪宗門仏」・「奇跡屋」・「山屋敷秘図」
天国荘奇譚(連作短編)
叛旗兵
夜より他に聴くものもなし(連作短編)
剣鬼と遊女(時代小説短編集)
表題作・「元禄おさめの方」・「姦臣今川状」・「筒なし呆兵衛」・「紅閨の神方医」・「陰萎将軍伝」
青春探偵団(連作短編)
切腹禁止令(短編集)
表題作・「殿様」・「一、二、三!」「三剣鬼」・「嗚呼益羅男」・「妖剣林田左文」・「南無殺生三万人」
赤い蝋人形(探偵小説短編集)
表題作・「賭博学体系」・「美女貸し屋」・「とんずら」・「我が愛しの妻よ」・「痴漢H君の話」・「ダニ図鑑」
いだ天百里(連作短編)
長脇差枯野抄(時代小説短編集)
表題作・「妖僧」「宗俊烏鷺合戦」「山童伝」「起きろ一心斎」・「死顔を見せるな」「売食奴刑」「盗作忠臣蔵」
旅人 国定龍次(上・下)
死なない剣豪(時代小説短編集)
表題作・「降倭変」・「幽霊船棺桶丸」・「お玄関拝借」・「国貞源氏」・「慶長大食漢」・「お江戸英雄坂」
魔軍の通過
ヤマトフの逃亡(短編集)
八犬傳(上・下)
江戸にいる私(時代小説短編集)
表題作・「山田真竜軒」・「悲恋華陣」・「黒百合抄」・「明智太閤」・「叛心十六歳」
神曲崩壊
太陽黒点

 

ハルキ文庫

 こちらもいまのところ探偵小説中心。これから色々出るみたいだったはずですが、98年に入ったあたりからなんかとまっちゃってるぅ。山風以外の新刊もあんましみないしなあ・・・ハルキ文庫スペースそのものがどんどん縮んでるよ・・・頑張れハルキ(涙)頼むぜハルキ(涙)
 

角川文庫

 たまーに復刊しています。よしのは97年に『おんな牢秘抄』と『忍法剣士伝』が出てるのみました。98年には『死言状』出てるみたいです。昔のは濃いピンクですが、今は黄色がかった薄いベージュみたいな色です。しかし!昔のは裏表のカバーに佐伯俊男の絵が入ってるのに最近のは裏カバーが作品解説になってるうう(涙)。『忍法剣士伝』とか表カバーの絵の構図からいって、裏カバーには表に出てない残り上泉伊勢守以下七人の剣士が描かれてたに違いないのに(泣)。(←しかしみもさんから御所蔵の旧版角川文庫にもついてないとのお知らせが・・・)この点は深く角川に反省してほしいです。角川文庫買ったら、読者ハガキで罵倒&嘆願しましょう。そもそも『魔界転生』とか忍法帖ちゃんと出せだよ・・・
 ちなみによしのは『くノ一忍法帖』のカバー絵が着物の前をかきあわせてるくノ一のバージョンをもっているのですが、大股開き(汗)バージョンまじでほしいです。2500円までならだしますんで、万一処分なさる方はご一報くださいませ。
 

講談社文庫/大衆文学館

 『棺の中の悦楽』などこれも探偵小説系かと思いきや、『妖説太閤記』のような時代小説や『忍者枯葉塔九郎』など忍法物短編集も出しています。薄い緑の地に濃いめの緑の縁取りが目印。文庫一冊1k円以上は高飛車なお値段ですが、短編集もちゃんと選んで入れてるかんじなんでやむなし。

古本屋・図書館で探すなら
 古本屋にはあんまし出回ってないです。出たら買われてしまうのか、そもそも手放す人少ないのか・・・。近所に古本屋があったら、可能な限りマメにチェックしておきましょう。また、古本屋は得意不得意があるので、古書市などに出かけて山風が出ていたら、それを出品した古本屋をチェックして買いあさるのもぐーです。おやじが暇そうだったら「山田風太郎さがしてるんですよ〜」とさりげなく世間話でもしてアピールしておきましょう。
 大学など研究機関な図書館には山風は寄贈とかないかぎり、大衆小説という性格上あんまり入っていません。意外に期待がもてるのは市立とか区立とかの自治体図書館。書架になくてもブームだったときに入ったのが閉架書庫で寝てる可能性もあります。
 よしのの場合、たまたま早稲田大学図書館(研究書庫)に、ストラングル成田さんの御教示によれば探偵小説マニアで山風の友達だった鈴木幸夫教授による寄贈本が山のようにあったので、それをもっぱら読みふけりました。同校出身の方は受付で申し出れば閲覧可能です。『妖異金瓶梅』の現在入手不能作品を含む版に山風の生献呈つきとかとんでもない文献が・・・まじでぱちりたかったのですが、同窓の愛好家にのろわれてはいかんのでやめました(よい子)。
 また他大でも学生の方でしたら自分の大学図書館に「早稲田にしかない本が読みたい〜」と自分とこになくて早稲田にはある本のデータを提出して紹介状を書いてもらえばこれまた入れます。
 単行本未収録作品はストラングル成田さんの頁を要参照。基本は国会図書館&近代文学館みたいです。
ところで山風ねたを友達に振ったところ、二名ほど「昔父親が好きで実家にころがってたよ」という人がおりました。友達少ないよしのとしては異様なまでの高確率☆角川文庫旧版やそれより古い講談社の山田風太郎忍法全集が眠っている可能性も・・・実家に帰ったらぱぱの本棚漁ってみる&友達にねた振ってみるというのも奥の手かもです。

講談社ノベルス(新書版)・山田風太郎傑作忍法帖

 第3次ブームの原動力。横尾忠則装丁の派手な表紙をみたらば速攻ゲットしましょう。京極夏彦から金井美恵子から「この人も山風読んどんのか!」という豪華執筆陣による解説も要チェック。これに収録されている作品にはまじで外れないっす。
 
講談社 山田風太郎忍法全集
 角川文庫旧版より古い昔絶対ポケットにはいんないのに「ポケット版」とか言われていた新書より横幅のあるかんじの中途半端な判型の本。古本屋で出てるのみたことないですが、でもあればお宝です。
 

講談社・山田風太郎全集

 カバーはわかりませんが黒地の装丁二段組のハードカバーです。手元にある11巻は1972年初版☆というわけでそれ以降の室町物・明治物は入ってないっす。しかし全集とかゆっといてデビュー作入ってないとか、『妖異金瓶梅』の「銭鬼」もやっぱはいってないわと「全集」名乗ってる割にはひどすぎる抜けが・・・山風の随筆「風眼帖」を連載した月報つき。11巻の月報は筒井康隆と高木彬光が書いてます。
 

講談社文庫

 赤みがかったオレンジ色。『婆佐羅』とかが散発的に出ていたようです
 

角川文庫・山田風太郎作品集

 背表紙の濃いめのショッキングピンクの色は覚えておきましょう。たぶん山風を一番出してるシリーズです。現在入手困難作品多数!忍法帖以下いろんなジャンルが入っているみたいです。『魔界転生』映画化と連動して第2次ブームをまきおこした角川メディアミックス戦略の遺産(たぶん)。
 

集英社文庫

 『不知火軍記』など歴史物短編集や戦記物。背表紙は焦げ茶。新刊もでかい本屋ならたま〜においてあります。
 

河出文庫・山田風太郎コレクション

 明治物が中心のようです。背表紙は白にカフェオレ色。
 

その他、富士見文庫・出版芸術社・旺文社文庫・文春文庫などでちらほら発行されているようです。

 

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