1998年の冬、開設まもないirc.dricas.comにIRCNetの友人と見物に出かけたことがある。
朝方だったので人はあまりいなかったが、愛知県の男の子としばらく話した。彼は一度、全然別の時間帯に話した近所の女子高生をずっと探しているとかで、彼女のことを知らないかといきなり聞かれて驚いた。ある程度ネットに慣れたユーザーなら、そんな風にやみくもに人捜しをしようとは思わないだろうし、そもそも「女子高生」と名乗る相手がほんとうに女子高生なのか、自分が想像しているような女性なのか、もう少し慎重に身構えるだろう。
とはいえそのような感覚の違いは、PC利用者であろうとDreamcastユーザーであろうと、初心者ではあたりまえのことである。
しかしDreamcastユーザーは、いくつかの表徴をもっており、トラブルの原因としてカテゴリー化されやすかった。
●「Dreamcastユーザー固有の用語」という表徴
DreamPassportではIRCの「チャンネル」(会話をする場)は「会議室」と呼ばれており、かれらは「チャンネル」を「部屋」と呼ぶといった慣習が生じた。そのように呼ぶことは、IRCNetのユーザーでもまったくないわけではない。(「#〜部屋」という名のチャンネルも散見される。)
しかし、それが本来所有できない物である「チャンネル」を、誰かの所有物であるとみなしたり、所有しようとする錯認の現れであるとして不快感を表し、批判するPCユーザー(主にパワーユーザー)もいる。
●「Dreamcastユーザー固有の文体」という表徴
Dreamcastのソフトウエアキーボードは、熟達すればそれなりに速くはなるものの、漢字変換の問題などもあって、独特のひらがなが多い短い発言になりやすい。
また、チャンネルの流れが速い場合、他人の発言を読み取りにくいため、会話に入れなくなってしまいやすくなる。
もちろんこれらの表徴は、個人差があるし、DreamcastユーザーではないのIRC初心者が、IRCに慣れたユーザーの感覚にそぐわない表現をしたり、省略の多い文体で発言する場合もある。さらに言えば、キャリアの長いユーザーでも、活動しているコミュニティによってはこのあたりの感覚にはかなりの温度差があるだろう。
しかし、PCからは相手がどこのプロバイダからつないでいるか、どのクライアントを使っているかみることができる。そして、相手をチェックしたとき、それがDreamcastユーザーであることを示唆する情報が表示された時、相手の行動がさかのぼって「Dreamcast的である」と解釈され、「またドリキャスユーザーだ」というカテゴリー化が行われることになる。