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■本日のお題。

オンラインコミュニティのあり方。先週よりは具体的編。



■「公共圏」(Public Sphere)という概念


・ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』(1962年)

近代および民主主義の理念の根幹にある、「公共圏」という理念を論じた。





この本で、ハーバーマスは、19世紀初頭にドイツで出現したカフェ文化、そしてそこで文学や芸術作品に関する議論を通して文芸的公共性を公共圏の例としている。

しかし、公共圏の理念は、具体的に実在した、というより、民主主義の理念から導き出された理想のようなものである。


ハーバーマスは、近代を、いまだ実現していない「未完のプロジェクト」と捉えており、それをどうすれば実現することができるかを、メディアと社会の関係から考えようとした。


←近代的主体の解体として、ネットワーク社会を論じるポストモダン的な視点との違い。


=文芸的公共圏@19世紀をベースに抽出された公共圏の基本的特徴=

・平等性

 社会的地位に関係なく、単なる人間として議論に参加すること。

・公開性

 討論の対象を入手する手段と、教養さえあれば、すべての人が議論に参加できる。

・自律性

 国家や教会などの権威によらず、自律的なコミュニケーションによって解釈していく。


■「公共圏」の媒体としてのマスメディア

#ここは純正ハーバーマスではなく、吉田純による補足。


マスメディアの発達と大衆社会の出現により、公共圏は直接顔を合わせる範囲から離れて、メディアによって媒介された仮想的な空間へ拡張していく。


=マスメディア@20世紀における公共圏の特徴=

・平等性

 対等な人間同士の関係から、見られる側(政治家や思想家などオピニオン・リーダー)と見る側(一般人)の分化が起きる。オピニオン・リーダーは世論に支持されることでその地位を保つ。

 →直接的な参加に資格が必要になってくる。ex. 間接民主主義


・公開性

 ・「公共圏」の分岐と複雑化

 大衆社会の成長によって、さまざまな議論の対象[学問・文学・芸術・宗教・フェミニズム・福祉や社会政策]が取り上げられるようになり、ローカルな公共圏が生まれる。それがメディアによって相互浸透していき、グローバルな公共圏にいたる。

 →公共圏が豊かになっていく。


・自律性

 社会空間としての公共圏は世論形成によって、政治システムを批判するだけでなく、みずからの在り方も批判的に討議していく。

 →公共圏の成熟

■「公共圏」の媒体としての電子ネットワーク/インターネット


=電子ネットワークにおける公共圏の特徴=

・平等性

 マスメディアを媒体とした公共圏に比べて、見る側/見られる側の分化はかなりゆるくなり、情報発信能力を持つ人が既存の権威によらずオピニオン・リーダーとして登場する可能性をもつ。

 →マスメディアベースの公共圏よりも、圏の接合の自由度の増大

 ←「デジタル・デバイド」の問題

 資産・教育などで、ネットワークへの参加条件は左右されうる。情報資産を軸とした「階級」の発生の可能性。


例:

・NGO、NPOのネットワーク化。


・公開性

 一定の機器を使えることや、技術的知識が前提となるが、参加を制約する条件はそれ以外にはない。

 また、複数の公共圏が互いに相互浸透しやすくなる、私的生活圏からの問題提起が行いやすくなるといったネットワークの柔軟度が高まる。

 →参加のしやすさ、問題提起のしやすさ。

 ←政治システムによる監視や規制の強化の危険性。個人情報保護と、情報公開のかねあい。


例:

・「東芝批判ホームページ事件」(1999年)

・子育て関係のホームページから、食の安全性を問題化したり、また行政に、地域医療や子育てへの支援を求めていく、といった動きにつながる可能性がある。


・自律性

 インターネットなどネットワークコミュニケーションの経験は、独自のリアリティをもつ自律した空間として認識されており、独自のルールを自律的に形成する。

 →自律性の強化。

 ←匿名性による、ルール形成の阻害。(「荒し」など、場を破壊して遊ぶ人[厨房]。「対話」ではなく、自説にとにかく固執し、論点のすり替えなどによって、議論を無意味に紛糾[フレーム]させてしまう人。)



■ネットワーク市民社会への課題


 繰り返し初期の情報化社会論が技術決定論として批判されているように、ネットワーク技術がインフラとして社会に行き渡れば、それで社会が変わる、というわけではない。

 ネットワーク技術を基盤としたコミュニケーションを扱う


 基本は、「情報を提供してくれるのは、相手の好意」「返事を」


・メディア・リテラシー

 「メディア・リテラシー(読解能力)」とは、メディアに騙されず、それを使いこなす能力であり、メディアが多様化していることから、主に教育領域で必要性が叫ばれている。


「メディア・リテラシーの18の基本原則」

http://www.mlpj.org/masterman.html



・「匿名性」の両義性

 学術レベルで運用されていた時代は、基本的に、本名@所属機関での発言が原則だった。

 (一部のコミュニティではこうした原則も残っている)


 ネットが大衆化していくなかで、生まれてきた匿名性は、ネットワーク技術を基盤とした公共圏の構築に、発言の自由の確保と、公共圏内の自律的な秩序への攻撃という相反する意味を持つ。

 匿名であるからこその自由を確保しながら、どうネットワーク市民として活動していける人間を育てるのか。



・「議論する」という行為そのものへのリテラシー

 自己の考えを主張する、相手の考えを理解する、議論するということには、それなりの技術が必要である。

 そのための教育というものは、日本ではほとんど行われておらず、今後の課題となっている。


■バーチャル・コミュニティ

 

 ではインターネットの一般利用が始まって8年、普及率もかなりあがってきたところで、実際のネットコミュニティはどのような成長を遂げたのか。


 むしろ、国内での利用は、公共圏的なものよりも、趣味や遊びなどを通じた、ゆるやかなコミュニティの形成に向かっている。


■本当ノわたし


匿名性は、個々のユーザーに、自分の身分、状況から離れた対等なコミュニケーションを提供する。

そこでは、日常では逆に言いにくいこと、言えないことを言う、またそれを承認しあうコミュニケーションが可能になる。


しかし、「本当の」わたし、というのはなんなのか、「本当の」わたしと「嘘」のわたしがいるのか、それともさまざまな「本当のわたし」がいるのか。


例:

・摂食障害者のコミュニティ

摂食障害者など、「人とは違う病気/言いにくい病気」をもってしまった場合、症状もさることながら、周りからの孤立、誤解などが患者の大きな負担になる。

ネットで同じ悩みをもつ人、克服した人と交流をもつことで、支えになる可能性がある。

←セルフ・ヘルプグループセラピーとの類似。


 ただし、カウンセラーに相当する人物がいないために一人が調子が悪くなると引きずられてしまう可能性も。


・2ch語(巨大掲示板)を女性ユーザーが使う意味

2ch語は、基本的に性別のない言語である。それを使うことで、「女」というアイデンティティを隠す一方、「女らしさ」などの規範から離れたやりとりを楽しむことが出来る。


■わたしノ解体


『接続された心──インターネット時代のアイデンティティ』

シェリー・タークル(社会心理学:MIT)




・MUD*(Multi User Dangeon)と呼ばれる、チャットを主体としたオンラインゲームRPGユーザーを中心に、フィールドワークを行っている。


*MUD

オンライン上で行うTRPG(テーブルトーク・ロール・プレイング・ゲーム)。

一般的なコンピュータRPGゲームと違い、それぞれのシステムの世界観に合わせて、キャラクターをつくり、演じあっていくのが主目的。


「特にはっきりと嘘をついているってわけではないんですが、オンラインにいると全然違う人間になったような感じがするんです。はるかに外向的で引っ込み思案でなくなるの。もっと自分らしくなれる感じと言えます。でもそれは矛盾している。こうだったらいいのにという自分になってるというほうが、近い感じですね。顔を合わせているあいだ、なんとかオンライン上の私になって過ごせればいいなって思ってるんですけど。」

(メッセンジャーで知りあい、数ヶ月間交際した男性と会うことになったインテリア・デザイナーの女性へのインタビューから)


また、タークルは、三つのネット上の名前を使い分けて、さまざまな「人格」を演じている女性にもインタビューしている。彼女はとまどいながらも「ひょっとしたら人生ももう一つのネットなんだと思えば、気が楽になるかもしれない」と語っている。



今世紀前半は、アイデンティティは「確固としたもの」として語られていた。それは、日常生活の中で、場面場面で切り替えがあっても、家族や組織など、所属するコミュニティが決まっていたからとも言える。

それに対して、ネットワーク社会では、気軽に切り替えつづけることができる。そのためにアイデンティティは、その場その場で形成されたものとなり、「アイデンティティ」という概念そのものも相対化されていく。


 


■ネットワーク社会を生きるということ


・「選択性」の増大と、「寂しさ」の補完

 ユーザー側からみた、ネットワーク・コミュニティの最大の特徴は「都合の良さ」である。行きたいときに参加して、面白くなければ行かなくなればそのままで終わる。


 その一方で、「リアル」では出し切れない「本当のわたし」をネットで出す、出して認めて欲しいという態度も平行して存在している。


 この二つの方向性が、ひとびとのネットワークへのかかわりの基本となっている。

 「いつでも切ることができる/本当のわたしをさらけだしたコミュニケーション」


例:宮部みゆき『R.P.G』(2001年)


実際に妻と娘がいるのに、映画関係の掲示板サイトで知りあった人々と「家族」(「妻」・実際の娘と同名の「娘」・実際には存在しない「息子」)ごっこをしていた男が殺される。

被害者の使っていたパソコンのデータから相手が割り出され、事件の前、父親に話しかけている不審な人物を見たと主張する娘と、「疑似家族」との面通しが行われる。


そこで、「自分を認め、愛してくれる親」を求めていてそれをネットで発見したのだと語る疑似的な「娘」と、それとは距離を一応置きつつも、やはりどこかで求めていた「息子」、そしてもう少し「リアル」に踏み込んで男と関係を持とうとしていた「妻」の、関係性が取調室という密室で描かれる。


作中では、「わかりあう」ことを求めて安易に「理想の家族」を演じようとした被害者は、実際の家族を傷つける可能性に気づかなかったこと、逆にもし加害者がネットを使っていて、「わかりあう」ことを押しつけられる不快感というものを、誰かと共有することができていれば事件は起こらなかったかもしれない、と指摘されている。


このような流れは、メディアの発達だけでなく、社会そのものの変化によって現れてきたものである。


←たとえば、携帯電話の使用法(ワン切り・着信)などから、選択的な人間関係の在り方が分析されているが、同時に携帯電話研究では、携帯電話の普及に先だってそういう心性が若者世代を中心に広がっていたことが指摘されている。


単純に新しいメディア(あるいは古いメディア)ネットワーク技術を使わなければ、その流れを拒否できるというわけではない。



■おまけ:正しいネットワーク利用

「WEB110番」

http://www.web110.com/


「@police」(警察庁)

http://www.cyberpolice.go.jp/


□知らない間に加害者になってしまう、編。

=コレは絶対ダメ=

・掲示板など、不特定多数が見るところに個人情報出す

 本名・電話番号(携帯電話*含む)・住所・所属

 他人のを出すと、最悪訴訟くらいます(名誉棄損・業務妨害ほか。相手が精神的にダメージ甚大だと、傷害罪に相当する可能性もなきにしもあらず)。

 自分のを出すのも原則止めたほうが。携帯電話番号など

 * 携帯電話の番号から、契約者住所を割り出すグレーなビジネスも存在します。

 

・なりすまし+不正アクセス

 「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」

 他人のID・パスワードを不正に使用する。

 * クレジットカードや銀行の口座パスワード並にきちんと管理を。


□気がついたら被害者、編。

・ネットオークション詐欺

 競売で落としてお金振り込んだはいいが、品物が来ない・・・

 ブランド物を買ったはずが、よくよく見たらこれってパチ物?

 →最寄りの警察(所轄署など大きい処で受付。交番などはやってません)


・得体のしれない電話がガンガンかかってくる

 電話番号をどっかの掲示板や、出会い系サイトに書き込まれた可能性大。

 かけてくるヤツに、どこで見たか確かめ、管理者に連絡。


=要注意な領域=

・掲示板などで、フレーム(論争)が起きた場合

 無視。下手に反論しようとすると、被害は拡大するばかり。

 相手をしてしまうことを「燃料を投入する」とも言います。被害が拡大するばかり。

 無視が唯一無二の正解。


・チェーンメール&デマメール

 「このメールをみんなに転送してください」というメールは相手にしないが鉄則。

 最近のよくあるチェーンメール

 ・特定の血液型が足りないとか。

 ・テレビの企画でどこそこに集まってくれとか。 


・「WinMX」などファイル交換ツール

 便利だけれど一応非合法であることを忘れずに。

 高価なソフトウエアの不法コピーは犯罪です。


・「2ch」の利用

 過剰に怖れる必要はないが、独特の用語、ノリがあるので、最初はわかりにくい。

 いちいち質問すると速攻罵られるので注意。わからない言葉は2ch用語サイトを参照して自分で調べる。


■今日のメールに書いてください

今回は授業では紹介しないので、プライベート話も上等。

「メールやチャットから恋をするって、どんなかんじなんだろう?」

・したことある人

 感情の動きとか、関係の在り方とか、どんなかんじだったかを。


・したことない人

 してみたいか、してみたくないかをまず。で、とりあえずどんなかんじなのか想像してみる。


yoshioh@vanilla.freemail.ne.jp

CC:mami_k@keisen.ac.jp


参考文献:

『メディア文化の社会学』加藤晴明 2001年

http://www2.cnc.chukyo-u.ac.jp/users/hkato/

『インターネット空間の社会学』吉田純 2000年

『バーチャル・コミュニティ』ハワード・ラインゴールド 1993年

『接続された心』シェリー・タークル 1995年