情報化社会論の「歴史」

 基本的には、「情報化によって社会が大変革する」という議論。

 最近、インターネットなどの技術によって登場したように思われるが、相当前からビジョンはあった。
 #「情報(化)社会」という概念は日本発。

■第一次ブーム(1960年代:高度成長期。次の社会像を探ろうというもの)

 ・梅棹忠夫の『情報産業論』(1963年)
  文明論的観点から、農業→工業→精神産業という発展図式を立てる。
  #梅棹忠夫:民族学・比較文明学 国立民族学博物館初代館長

 ・「脱工業化社会論」
  D.ベル、『脱工業社会の到来 : 社会予測の一つの試み』(1973年)
  前工業社会 :農業を中心とする社会 (アジア・アフリカ・ラテンアメリカ)
  工業社会 :大規模機械化工業を中心とする社会 (西欧・ソ連・日本)
  脱工業社会 :知識・サービス産業中心 (アメリカ)

 ・A・トフラー 『第三の波』(1980年)
  第1の波:一万年前の農業の発明
  第2の波:産業革命
  第3の波 :1955〜65 年にアメリカに初めておとずれた情報革命
       生産者としての役割を合わせ持つ消費者が出現

 これらの論(「未来学」と総称されてもいた)の特徴
 「進化論的な発展段階をモデルとして、産業社会*の次の段階として、『情報化社会』を最上位に置く。」

 * 産業社会の特徴
  ・機械技術のいちじるしい発展→消費社会へ
  ・資本の集中化と官僚制的な機構
  ・階級構造の変化 「新中間層」の増大と社会の平準化

■第二次ブーム(1980年代:「ニューメディア」)

 □ビデオテックス網(日本ではキャプテンシステムと呼ばれていた)など双方向性をもつ文字・静止画通信技術を中心に、政府主導で提唱される。

  地域網での住民向けサービスや、ゲーム、チャット、掲示板などのサービスもあった。

  専用端末を使用し、電話回線を利用したネットワーク。ディスプレイはテレビを利用。

  ゲーム機をネットワーク端末として利用するサービス
  ・ファミコン+外付けモデム(「ディスクファックス」1988年)
  株取引、ネットバンキングなどの端末として利用を予定。

  しかし、日本ではニーズが掘り起こせず、うやむやに。

  →フランス:ミニテル(フランス)
   オンライン電話帳として端末(ミニテル)を電話回線契約者に配付する。
   1981年サービス開始。
   1984年から決済サービス「キオスク」。
   生活情報や通販、チャットや掲示板サービスも。
   現在でも、インターネットとは別に生活に根差している。
   ・端末が一気に普及し、またそのコストをユーザーが負担しない
   ・セキュアな決済手段と課金システムのために、商用利用が発達

■第三次ブーム(1990年代前半「マルチメディア」/1990年代後半「IT革命」)

 □「マルチメディア」

 パソコンの高機能化を受けて。文字・静止画・動画・音などを総合的に扱い、インタラクティブ性を付与したもの。教育などの分野で期待される。

 □「IT(Information Technology)革命」
 情報技術によって、国家、社会、企業など組織のあり方を変革しようというもの。
 ・国家:電子政府と情報公開
 ・社会:NGO・NPOなどのネットワーク
    :インターネットによるマスコミ情報の相対化
 ・企業:SCM(Supply Chain Manegement)など生産・流通の効率化
    :CRM(Custemer Relationship Manegement)顧客情報の集約化

「情報社会」は、ほんとうにポスト(post)産業社会なのか。
 →いまのところ「より便利になった」産業社会・・・なのではないか。