=黙読の文化と近代的主体の成立(?)=
■東アジア 写本、版本、活字本
木版印刷:唐代(618〜)はじめ頃の中国で始まる
現存最古の印刷物:751年朝鮮仏国寺石塔の陀羅尼経、770年百萬塔陀羅尼経
現存最古の刊記のある木版本:868年唐の金剛般若波羅密経
活字印刷:1040年頃宋の畢昇が膠泥活字を発明
金属活字印刷:1230年頃高麗で銅活字を制作、1403年李朝の王立鋳字所設立
■ヨーロッパ 写本、木版本
木版印刷:14世紀後半に開始、15世紀には木版本制作
現存ヨーロッパ最古の刊記のある木版画は1423年「聖クリストファー」
銅板印刷:15世紀中葉に登場
■ヨーロッパの活版印刷
1440年代 グーテンブルク→ロシアをのぞくヨーロッパ各地に一気に普及。
写本時代には雑多にまとめられ、つなぎ合わされていた。
表紙と奥付などをもつ、一個の完結したものとして整理されるようになる。
→ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』
19世紀初頭前後
・ヨーロッパ各国で著作権の概念が成立し、法制化がはじまる。
#日本:滝沢馬琴(1767〜1848 『南総里見八犬伝』ほか)あたりから、「原稿料」で生活を立てるように。
→職業としての「作家」が可能に。
→「作者」の「所有物」として「作品」が定義づけられる。
19世紀後半〜第二次世界大戦
・「国民教育」の拡大による識字率の向上
・製紙および印刷技術の発展による、本の大量生産
→「一人で本を黙読する」ということが一般化
(それまでは、読める人に読んでもらう、ということが多かった)
柳田国男(民俗学):『明治大正史 世相編』(講談社学術文庫)で、プライバシーの低い日本の家庭のなかで、青年たちが黙読するという行為を通じて、プライベートな内面を獲得していったと記述。
「個人の内面」を重視するひとびとと社会の誕生。
オング、マクルーハンら(次週)など、メディア論によって、近代社会の特徴として強調される。