パソコンとDreamcast(DreamPassport2)の違いPCから利用する際のIRCの基本的な機能IRCではただ会話を楽しむだけでなく、相手の情報を調べる、チャンネル(話す場)の設定を工夫するなど、多様な形で活動を行うことができる。 そのうち「DreamPassport2」との相違点を中心に、主要なPCクライアントで使える機能をまとめてみよう。 ●複数チャンネルで同時進行での会話 ●Whois(/whois) ●チャンネルを新設でき、オペレーター権限を管理できる オペレーター権限の管理の仕組みなどからいって、IRCはユーザーにある程度権限をゆだね、ユーザー間の信頼関係に基づいてチャンネルを運営していくことを一つの理念としていると言えるだろう。 DreamPassport2で使える基本的な機能 DreamPassport2の「チャット」では、マシンの基本的な性能の問題だけでなくおそらくユーザビリティの問題などから、PCで使われるクライアントの機能を大幅に限定したものとなっており、先にあげたコマンド類はほとんど使うことが出来ないほか、PCのIRCクライアントと比較するとさまざまな制限がある。 ●一度に一つのチャンネルしか入れない ●相手の情報はnick(IRC上の名前)しかわからない。 ●チャンネル・オペレーター権限をもてない 「DreamPassport2」は、相手の情報を調べたり、排除したりするための機能がなく、(おそらくは無用なトラブルを避けるために)「とりあえず文字でおしゃべりする」ことに限定された仕様になっていると言えるだろう。 PCクライアントとDreamPassport2の違い以上で挙げた差異をまとめてみよう。 ●ユーザーが利用できる権限のレベルの違い[コミュニティ構築の理念の違い] 本来のIRCは、ユーザーがチャンネル管理の権限をもち、互いの信頼に基づいて管理することを前提にした仕様だと言える。 対してDreamPassport2では、チャンネルの新設や設定などの機能は省かれており、誰かが設定したチャンネルでしか会話できないし、チャンネルの管理もできない仕様になっている。というより、そのようなものが存在しないことを前提に作られたものになっている。 ●nick以外の個人情報の取得[他の参加者の同定と匿名性の高低の認識の違い] その主要な仕様を実現しているPCクライアントからは、nick以外の個人情報もある程度見えることから相手を同定しやすくなり、IPアドレスが互いに見えていることから、匿名性が完全に保障されているわけではないことを知っている。その結果、なにをしても責任をとらなくていい空間だとはみなされていない。 DreamPassport2では、任意に一時的につけるnick以外の個人情報をみることができない。そのため、相手もそうだと誤解して、暴言を吐く、「荒らす」など攻撃的な行動にでやすい。 ●会話の間合いのずれ[コミュニケーションのリズムの違い] Dreamcastの別売のキーボードをもっていない場合は特に、発言のタイミングがずれてしまう。会話についていけなくてもスクロールして流れを読み直せるPCのクライアントと違って、ソフトウェアキーボードを使っている場合にはわずか6行分のログしか読むことが出来ないDreamPassportでは、チャットのリズムが熟練者と初心者の違い以上に大きくずれてしまう。 このリズムのズレは、コミュニケーションを円滑に行うには大きな障害となる。会話の内容だけで人は盛り上がり、時を共有しているという感覚を実感するわけではない。親密さを得るには、同じリズムでのれることがなによりも重要なのである。
これらの要素はいずれも、CMC(Computer Mediated Communication)における状況の定義を特徴づける重要な要素である。 「PCユーザー」とここではおおまかにパソコンからのユーザーをくくっているが、もちろんその経験のインターフェースとなるクライアントの仕様は異なっている。が、上記にあげた基本機能は日本で使われている主なIRCクライアントで実現されていることである。 それに対して、PCユーザーとDreamcastユーザーの差異は圧倒的とも言える。彼らは、同じチャンネルという場に入っていても、かなり異なった枠づけをしていたと推測することが出来る。同じ場を共有しているのに、その解釈の手がかりとなる枠組みは大きくずれており、適切な振る舞い方も異なる。そしてそのずれを認識できるユーザーはほとんどいなかったのである。このことが両者間のあつれきに大きな要素となっていたと言えるだろう。 |